2014年3月10日月曜日

漫画版ニンジャスレイヤー「ラスト・ガール・スタンディング」#2 前半・後半レビュー

 サイバーパンクニンジャ活劇、ニンジャスレイヤー。@njslyr_ukiyoeアカウントにて連載中のコミカライズ、今回のエピソードは「ラスト・ガール・スタンディング」第二話です。
 第一話のレビューはこちら
漫画版ニンジャスレイヤー「ラスト・ガール・スタンディング」#1 前半レビュー
 さて、前回倒れ伏すヨタモノ達を見下ろして嗤うヤモトのシーンで終えましたが、第二話ではシ・ニンジャ由来の暴力衝動に苦しむヤモトの姿が描かれます。
 超人的な力を得たために歪み、ニンジャソウルのもたらす暴力的な衝動に飲み込まれてしまったニンジャは少なくありません。しかしニンジャスレイヤーが早くから師匠のゲンドーソーと関わった事でナラク・ニンジャを制御できたように、ソウルに憑依されても適切な時期に適切な出会いを経ることでニンジャソウルの影響を抑え込む事ができます。ヤモトの場合はアサリが人間性を保つよすがとなっているのでしょう。
 これが後々、ショーゴーがヤモトと同じように嗤っていたとの独白に繋がります。
 今回のボスキャラクター、ソニックブームの登場シーンです。彼は所属する組織にショーゴーをスカウトすることを試みるものの、断られて実力行使にかかります。
 サラリーマン然とした表の顔から豹変し、何十人ものヨタモノたちをまるで寄せ付けなかったショーゴーを髪をセットしながら制圧、しかもその間ネクタイは地面に落ちていない、と余裕たっぷりの強者として描写しています。
 その後はパンク・ニンジャのディセンション(憑依)シーンがショーゴーの回想として描写されます。

俺様はパンク・ニンジャ……生まれはロンドン、死んだのは1979……くだらねえ死に方しちまった……だけど今からお前は俺様……お前は死なないぜ……死んでたまるか……そう簡単に……(やめてくれ!)73
posted at 22:09:37
没年の一致、薬物中毒で死亡した前歴、胸から血を流してギターをかき鳴らす姿はイギリスのパンクロッカー、シド・ヴィシャスとの関連が指摘されています。

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 ただし、ほんやくチームによる広報アカウント@diehardtalesでの質疑応答によると、パンク・ニンジャにはシド・ヴィシャスのみならず複数のモチーフがあるようです。
【パンク•ニンジャは実際あの人ですか?】 D「しかしながら憑依したショーゴーの仕上がり方はアラン・ヴェガへのオマージュを思わせるし、謎が多い。大西洋をまたいでるな。関係ないが、あのバンドに関しては、おれ個人はジョニーロットン派なんだ」
posted at 12:30:25
シ・ニンジャが折り鶴の姿でヤモトの脳内に現れたように、パンク・ニンジャのソウルは欧米のカートゥーンのようなデフォルメされた姿で描写されています。ニンジャソウルが人格を持った魂というのなら、人間に憑依する際も人型をとって登場してもよさそうなものです。これはどういうことでしょうか?
 原作では、ニンジャソウルの由来について「平安時代にハラキリ儀式を行ったニンジャ達の魂がキンカク・テンプルに昇ったもの」という説明がされており、他のエピソードでは日常生活で使われているサイバー空間と古代から存在するキンカク・テンプルが何らかの理由で繋がっている描写が頻繁に登場します。そのためコミカライズでもニンジャソウルを抽象的なもの、データ化されたものとして描写しているのかもしれません。
 ニンジャスレイヤーに憑依しているナラク・ニンジャのソウルがおぞましいながらも人間の姿形を保っているのとは対照的です。
 これはナラク・ニンジャのソウルが今までニンジャに蹂躙された人間たちの怨念を代表しており、憑依後もニンジャスレイヤーの脳内で人格を保っている事に関係しているのかもしれません。
 そしてショーゴーの必死の拒絶にも拘わらず生き返らせようと試みるパンク・ニンジャもまた、ニンジャ特有の人間に対する暴虐、無慈悲さを備えていることが分かります。この時サングラスを掛けさせるシーンを挿入する事で、ショーゴーの容姿の大幅な変化がソウルの憑依由来であることもスムーズに説明されてもいます。
 次はショーゴーが遺体安置所で目覚めるシーンです。
 これもまた印象的なシーンです。白い布を被って蘇ったショーゴーの姿はまるで幽霊か何かのよう。原作でも、超常的な存在であるニンジャ達はしばしば作中の人物から「オバケ」に例えられます。この場面では、どん底の経験を経て人間からオバケになってしまったショーゴーの覚醒時のショックをごく自然に、かつ印象的に描くことに成功しています。
 そして後半はヤモトが、学校の権力者達に目を付けられて詰問を受けるシーンから始まります。
ヤモトを囲んでいるのはアメフト部、チア部といったスクールカーストの最上位に位置する「ジョック」達です。他にもサイバーゴス・ユーレイゴスなど、ニンジャスレイヤーではアメリカのスクールカースト制度が未来の日本でも独自の発展を遂げたものとして描かれています。
 そしてニンジャスレイヤーはサイバーパンク、反体制の物語であるため、これらジョック達は徹底して抑圧的で傲慢な支配者として描かれた上で、これでもかと酷い目に合います。自業自得とはいえ見ていて少し気の毒になってしまう程です。
そして美しいキョートの情景描写とともに、新天地・ネオサイタマにおける幸福なヤモトの学生生活が続きます。満たされなかった彼女の過去の回想をはさみつつ、これから壊される日常の価値を引き立てた上で次号への引きとなりました。

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